美術館訪問記-64 ホーン美術館

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(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

ジョットというと思い出すのはイタリア、フィレンツェにある「ホーン美術館」。 ここにあるジョットの「聖ステファノ」はその鮮烈な色彩と清浄な凛々しさに 惚れ惚れと見とれてしまいます。 ジョットの良さが発露されている心洗われる絵画です。

頭に載っているのは聖ステファノのアトリビュートになっている石です。

添付1:ジョット作「聖ステファノ」

添付2:ホーン美術館外観

ハーバート・ホーンは1864年にロンドンで生まれ, 1916年にフィレンツェで死んだイギリス人で,詩人で建築家。 後に美術批評を手がけ,美術商として活躍した人物。 第12回で登場したバーナード・ベレンソンの下請けもやっていたようです。

彼はこの「聖ステファノ」をロンドンの画廊で1904年に9ポンド5シリングで 買ったといいます。今では信じられない話ですが。

ホーン美術館はアルノ川に近い4階建ての15世紀末に建てられた パラッツォ(宮殿)をホーンが1911年に買い取り、自宅としていたものを、 死に際して、彼の名を冠した美術館とする事を条件に、 収集品もろとも国に寄贈して出来たもの。

ここは入口で美術館本を借りて、それを見ながら回ります。 展示品には番号が振ってあるだけで、本がなければ、作者や製作年度が判りません。 作品は2階、3階に展示してあり、1階、4階は事務室になっています。

各階3部屋ずつで、こぢんまりとはしていますが、富豪と言うほどではなかった 一介の美術評論家のホーンが集めたとは信じられないような素晴らしい作品群が 古い家具を配した室内に並べられており、感嘆しながら廻る事になりました。

第21回で触れたウフィツィのミケランジェロのトンドのように、 額縁に4つの人頭彫刻が突き出ているドメニコ・ベッカフーミのトンド、 「聖家族と聖ヨハネと寄進者」がありました。

ミケランジェロとベッカフーミはほぼ同時代を生きているので、 その頃そういう風潮があったのかもしれません。

ピエロ・ディ・コジモのトンドもありました。

瞠目したのはシエナの画家、ピエトロ・ロレンツェッティ(1280−1348)の 美麗三幅祭壇画があったことです。

ピエトロは弟のアンブロージョ・ロレンツェッティと共に シエナで活躍した画家ですが、アッシジの聖フランシスコ教会で働いた事があり、 そこでジョットに強い影響を受けています。

この絵にもその影響は顕著で、自然主義的な表現で3次元的に表され、 平面的な中世絵画からは完全に脱却しています。 色彩も豊かで心和むものがあります。

フィリッポ・リッピの「ピエタ」も印象に残るものでした。

聖カタリナ:聖人。殉教者。歴史上の人物。282−305年。エジプトのアレクサンドリアの王女で幾つかの伝説がある。幻想の中で天国に運ばれ聖母マリアの仲介でキリストと婚約した。皇帝に言い寄られたが、拒絶したため車輪にくくりつけられる拷問にされそうになったが、車輪はひとりでに壊れたため斬首された。通常車輪を持って描かれる。キリストとの婚約を主題にした絵画も多い。

聖マルガリータ:マルガリータと名のつく聖人は何人かおり、この場合はアンティオキアのマルガリータ。伝説上の人物。現在のトルコの異教の祭司の娘として生まれたが、キリスト教を信じ、地方の高官から種々の拷問を受けたが、奇跡が起こり切り抜けた。拷問の一つは竜に飲み込まれる事だったが、十字架をかざすと腹が割れ、無事に出られた。このため彼女は処女ながら妊婦の守護聖人になっている。

ピエタ:十字架から降ろされたキリストの遺骸を抱き悲しみにくれる聖母マリアの彫刻や絵画。転じて死せるキリストのみを指すこともある。

添付3:ホーン美術館内部

添付4:ベッカフーミ作
「聖家族と聖ヨハネと寄進者」

添付5:ピエロ・ディ・コジモ作
「聖ヒエロニムス」

添付6:ピエトロ・ロレンツェッティ作
「聖ベネディクト、聖カタリナ、聖マルガリータ」

添付7:フィリッポ・リッピ作
「ピエタ」

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