美術館訪問記 No.14 ウッドワン美術館

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(* 長野一隆氏メールより。画像クリックで拡大表示されます。)

ウッドワン美術館

フェルメールほどではないですが、 日本でもゴッホの絵の取引が話題になったことがありました。 もう9年前、2003年のことです。

画家の故中川一政のコレクションにあり、 せいぜい1万円程度とみられていた「農婦」図が、 オランダ、アムステルダムにあるゴッホ美術館の鑑定で、 オークション直前にゴッホの真作と認定され、 6600万円で落札されたのを記憶されている方もおられるでしょう。

この絵が展示されているのが広島県廿日市市にある「ウッドワン美術館」です。

ゴッホ作
「農婦」

岸田劉生作
「毛糸肩掛せる麗子肖像」

岸田劉生作
「切り通しの写生」
東京国立近代美術館蔵

2003年に廿日市市に合併されるまでは人口855人だった吉和村に、 不釣合いな3階建ての近代的なビルディングが建っています。 その中に、本館、マイセン館、アール・ヌーボー館の3館から構成される ウッドワン美術館があります。 1996年開館。

総合木質建材メーカーの株式会社ウッドワン(旧住建産業)が所有する美術品 約800点を展示、公開するために設立。

実質同社の中本利夫会長が集めたもので、収蔵品は、
橋本雅邦、富岡鉄斎、竹内栖鳳、横山大観, 川合玉堂、上村松園, 鏑木清方、 小林古径、安田靭彦、奥村土牛、福田平八郎、速水御舟、小倉遊亀、東山魁夷、 伊東深水、橋本明治、杉山寧、平山郁夫、片岡球子、加山又造、中島千波、高橋由一、浅井忠、黒田清輝、藤島武二、岡田三郎助、和田英作、青木繁、 坂本繁二郎、中村彝、藤田嗣治、梅原龍三郎、安井曽太郎、国吉康雄、長谷川利行、 岸田劉生、小出楢重、須田国太郎、村山槐多、佐伯祐三、小磯良平、熊谷守一 等。

名のある日本人画家の作品は日本画、洋画を問わず 全て揃っているといっても過言ではありません。

岸田劉生の「毛糸肩掛せる麗子肖像」は2000年に国内オークションで 3億6千万円で落札したものですが、日本人画家としては過去最高の落札額でした。

岸田劉生(1891−1929)は大正から昭和初期にかけて活躍した近代日本を代表する 洋画家で、中学を中退して白馬会葵橋洋画研究所に入り、黒田清輝に師事。 1910年には文展に2作が入選する等、早くから画才を発揮しています。

翌年雑誌「白樺」主催の美術展で白樺派同人達と知り合い、同誌を通じて、 セザンヌやゴッホなど後期印象派に触れ、彼等の模倣のような作品を残しています。 この頃、「劉生の首狩り」と言われたほど、友人達の肖像画を多く描きました。

その後ルネサンスやバロック美術に惹かれ、特にデューラーに傾倒、 独自の写実表現に向かいます。 1915年には草土社を主宰、画壇に影響力を持つようになり、劉生の住む 神奈川県藤沢町鵠沼に移住する画家達も出てきました。 冒頭に名前の出た中川一政などは劉生の家に食客として転がり込む有様。 この鵠沼時代に「切り通しの写生」や一連の「麗子像」など、 劉生の代表作が輩出しています。

しかし関東大震災後に京都に移り住むと、茶屋遊びや古美術収集にのめり込み、 浮世絵や宋元画に影響された画風に転じ、生涯一度の中国大陸への外遊直後病死。 享年38歳の若さでした。

劉生よりも10歳も若くして夭折した、青木繁の「漁夫晩帰」もありました。
彼の代表作「海の幸」とは全く異なる、訴求力に乏しい、 穏やかな漁師夫婦2組と裸の男児1人が歩む、夕暮れの海岸風景。

ルノワールの「花かごを持つ女」と「婦人習作」もあります。 この2作は2005年に3億1千万円で落札。 これが国内オークションでは過去2位の記録とか。

肝心のゴッホ作品は前回のフェルメール作品同様、 私の眼には真作とは映りませんでした。 後世の画家の手がかなり入っているといいます。



注:

ルネサンス美術:ルネサンスとは再生を意味するフランス語で14世紀 - 16世紀にイタリアを中心に西欧で興った古典古代の文化を復興しようとする歴史的文化革命あるいは運動に基づく美術活動。

バロック美術:バロックとはいびつな真珠を意味するポルトガル語で、均衡のある理想美を目指したルネサンス美術の後を受け、意図的にバランスを崩し動的でダイナミックな表現を好んだ美術様式をいう。16世紀末から18世紀初頭にかけヨーロッパ各国に広まった。

青木繁作
「漁夫晩帰」

ルノワール作
「花かごを持つ女」と「婦人習作」

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